トライボロジー概論

  金属の塑性加工、切削や研磨、潤滑において金属表面の物理化学的性質が変化するために接する気相、液相または固相との界面で吸着や化学反応が起こる。また、それらの反応を他の現象の発現によって増強させることがあり、固体間の摩擦によってそこに介在する物質そのものの化学的変化および固体表面との化学反応が増強される。

これらをトライボ化学 “Tribochemistry” または“Frictional Chemistry”とよんでいる。さらに機械的エネルギーによる固体表面が接する物理化学的性質の変化が、固体が接する外相に影響を与え、両相界面における化学反応に着目し、Tribochemistryより広い意味で “Mechanochemistry”という言葉が加えられた。 トライボロジーの概念図を[図−1]に示す。  

[図−1] トライボロジー基礎概念図
 1)潤滑モード

T: 境界潤滑 (Boundary Lubrication)

U : 弾性流体(混合)潤滑  (Elastohydrodynamic Lubrication : EHL)

V : 流体潤滑 (Hydrodynamic Lubrication)

ストリーベックは軸受けの摩擦についての実験を行い、摩擦係数fを潤滑の粘度η・荷重W・速度Vの関数とし、潤滑領域をうまく説明している。

そのストリーベック曲線と潤滑フェーズを[図−2]に示す。

このストリーベック曲線は、あくまでも理想曲線であり、潤滑剤の構造やテストピースの表面粗さに大きく左右されるため、場合により曲線が書けないことがありますので、データのn数を多く取ることをお勧めいたします。

[図−2] ストリーベック曲線と潤滑フェーズ

[図−3] 潤滑領域に対する潤滑・無潤滑における摩擦係数の概略図
 2)表面化学
潤滑性は油剤と固体との結合状態と大きく関係し、固体と油剤の結合強さはそれぞれ異なる。

吸着のイメージを[図-4]に示す。
その強度は、物理吸着 < 化学吸着 < 化学反応の順である。

A:物理吸着
可逆的吸着
B:化学吸着
非可逆的吸着

[図−4]

一般に固体/液体間において、吸着されやすさを物理量としての値は吸着熱(Q)を用いる。
■物理吸着では2000〜10000cal/mol, 化学吸着では10000〜100000cal/molの値をとることが認められている。(但し分子間の相互作用は考えないものとする)
また潤滑剤の分子が固体表面に吸着する様子を[図−5]に示す。

[図−5] 化学物質の金属への吸着モデル


C:化学反応

A・物理吸着 : 60℃<,B・化学吸着 : 120℃<,C・化学反応 : <120℃の効果領域を[図−6] に示す。

[図−6] 油剤の温度特性


D:ケモメカニカル効果
摩擦面で起こる現象は複雑で、単なる物質の吸着作用に留まらず固体の表面構造やエネルギー変化を考慮する必要があると提唱している。

    ◇レビンダー氏の説 

      界面活性剤の吸着に伴う表面エネルギーの低下。

    ◇シュシュキン氏の説  

      界面活性剤の吸着によって表面近傍領域が塑性化する。

    ◇ウエストウッド氏の説                                                                       

  界面活性剤の吸着した表面近傍領域において、転位の挙動が変化する。  


E:増強反応(摩擦電磁気による)=エキソエレクトロン*+トポケミカル効果**+高温+高圧

摩擦面で起こる現象は複雑で、近年の塑性加工の概念は下記のモデルのように、塑性変形時に起こりうる電磁的要素を含めて考える必要があることを提唱している。
つまり 潤滑剤の作用効果が、先の吸着や反応等では説明出来ない現象が多々あるからである。 

それらの概念図を[図−7]に示す。

[図−7] 摩擦電磁気によるトライボ化学反応概念図(圧延によるモデル)

* : エキソエレクトロン/新鮮な金属表面から放出する電子群.

** : ポケミカル効果/摩擦・疲労・触媒活性等の性質が転位や欠陥のために影響を受ける効果.


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