水溶性潤滑剤の補給量の決定について |
一般に、物質の反応因子は、温度・圧力等の衝突確率が主要因となりますが、固体・液体・気体などと吸着・配向する成分を含む水溶液(以下、界面活性物質とよぶ)の場合には、分子会合(分子同士の集合体)の生じる臨界ミセル濃度(以下CMCとする)の概念の導入が必要で、CMCに基づく特異な現象を考慮する必要があります。
CMCとは、異なる物質同士が分散や可溶化し、均一系となるのに必要な最低限度の界面活性物質の量と定義されています。そのイメージを図−1に示す。
洗浄性が発揮する条件は、CMC以上の濃度において安定することが知られており、相対的界面活性剤の量の低下は、直ちに洗浄性や潤滑性の低下となって現れてきます。
即ち、油剤補給の目的は、油剤のCMCを確保することであり、時として復帰させる事と考えます。 また、補給量の要点としてCMCに至る必要量に加え、僅かの上乗せ補給が有効であり、補給の必要条件と考えます。
上乗せ補給量は、すでにCMC以下となっている場合と、CMC境界域にある場合と、CMC以上に保持されている場合とでは変わります。
一般的に、上乗せ補給量はCMC以下>CMC上>CMC以上となり、CMCを保持している場合、上乗せ補給量はほぼゼロとなり、以下1割から3割の間が妥当な上乗せ補充量と考えられます。
一方、原液性状が固形(ペースト状)であったり濃厚溶液である場合、仕立時あるいは補給時に局所的な凝集界面が形成され、高濃度時と同等な溶存状態の反応速度に至ることがあり、注意が必要となります。
これらの状況のうち、補給に際しては、予め原液を水道水にて希釈し、希釈油剤を直接タンクに補給することで、大幅に反応速度を緩和することが可能です。
これらの補給法は、補充量の分割を含め、界面活性剤・吸着成分を有する水溶性油剤に関して、同様に適応するものと考えます。