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銅材は、古くから殺菌効果があり、バクテリアの発生を抑制していると考えられており、事実、銅材用の加工油剤は、6ヵ月から1年の長期に亘る防腐剤無添加による使用が通常でした.
しかし、近年スライムの発生をともなった銅用伸線油剤のバクテリアの分析を行ったところ、108個/ccという高濃度のバクテリアを検出するに至り、無作為に行ったバクテリアの試験結果も95%以上の検体に103個/cc以上の生息が確認され 現在、銅用伸線油剤中にバクテリアがいることは特異なことではなく、バクテリアのうち伸線に支障をきたす菌種の増殖が問題であることが判ってきました.
具体的には、支障をきたす菌種の多くが嫌気性菌と考えられ、嫌気性菌の抑制がバクテリア対策の主要事項といってもさしつかえないほどです.
嫌気性菌とは、空気中の酸素を嫌う菌種であり、空気が遮断されるような環境で増殖します.嫌気性菌は好気性菌(空気を好み、大気下で増殖)と共存することが確認されており、総菌数を低下させることが嫌気性菌減少に有効と考えられます.
嫌気性菌の増殖条件 |
a) 伸線機を1日以上停止し伸線液が停滞する頻度が高くなった.
- b) オバーフローした油剤や雨水が直接タンクに混入した..
- c) 油剤を長期間更新せずに使用している.
- d) pHがいつも低く、8以下となることがある.
- e) 新液追加の回数や間隔、投入量が不規則であった.
- f) 機械掃除の頻度が減少した.
g) 更新時の洗浄を長期間実施していない.
- h) 油剤の濃度設定が高すぎたり、低すぎたりする.
これらの条件が複合してバクテリアの増殖を促進するケースが通常であり、条件を一項目でも改善することにより、劇的に好転することがあります.
バクテリアが伸線工程の周辺部位に与える影響 |
a) 線表面 |
・付着物の増大、2次行程不良 |
b) ダイス |
・ダイス荒れ |
c) 機械 |
・キャプスタンの汚れ |
d) パイプライン |
・狭窄 |
e) タンク |
・スライム発生 |
f) 伸線液 |
・pH低下 |
これらの症状は複数同時に発生することが通例であり、殺菌剤を投入することにより同時に鎮静化に向かう事例が多くあります.
ただし、殺菌剤の添加効果は1〜2ヶ月間で減衰するため、再投入が継続的に必要です.
対 策 |
バクテリア対策には、殺菌剤投入以外にバクテリアの発生を最小限に抑える方策をとることが最重要と考えられますので、その方法を最後に挙げてみます.
a) 嫌気性バクテリアの増殖を抑制するために循環ポンプ又は、攪拌機を正副とし常時循環攪拌を継続する.(液の攪拌により酸素を伸線油剤中に拡散しやすくする.)
b) pHを8.0以上に保つため新油の追加を定期的に行う.
c) 伸線液の流通経路には、バクテリアが大量に生息しており、液の更新時は初期菌数を0にする目的でルーブライト〔#105−S〕による抜本的洗浄と、ルーブライト〔#BK-70〕による殺菌を行う.
d) ゴミ・雨等が混入しないような場所にタンク・配管を配置する.